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  3. バイクのキーホルダー選びに悩む
キーホルダー

愛車の鍵がただの金属片に見えるとき

エストレヤが私の手元に来てからというもの、休日はもちろんのこと、平日でさえもバイクのことを考えない日はありません。納車の日にバイク屋さんから渡された小さな鍵は、私にとって魔法のステッキのような存在です。この小さな鍵ひとつで、あの重たい鉄の塊が目を覚まし、私をどこへでも連れて行ってくれるのだと思うと、手のひらに乗せているだけで不思議な高揚感が湧いてきます。でも、ふと冷静になってその鍵を見つめたとき、あることに気がつきました。何もついていない純正のキーは、あまりにもシンプルで、少し心細いのです。

家の鍵や車の鍵には、お気に入りのキャラクターや記念日にもらったストラップなどがついているのに、私の一番大切な相棒であるエストレヤの鍵が「裸」のままというのは、なんだか可哀想な気がしてなりませんでした。それに、バイクの鍵は車のスマートキーなどと比べるとコンパクトで薄いものが多く、ポケットに入れたまま忘れてしまったり、バッグの中で迷子になってしまったりしそうです。もし出先でこの小さな鍵を落としてしまったらどうしようという不安も頭をよぎりました。だからこそ、早急にこの子に似合うキーホルダーを見つけてあげなければならない、そう強く決心したのです。

最初は、ただ可愛くて目立つものをつければいいと思っていました。雑貨屋さんで見かけたキラキラしたチャームや、少し重量感のあるお洒落な真鍮のプレートなんかが候補に挙がりました。自分の好きなブランドのロゴが入った金属製のキーホルダーも素敵だなと、ネットショップのカートにとりあえず入れてみたりもしました。しかし、先輩ライダーたちのブログやSNSを見ているうちに、バイクのキーホルダー選びには「可愛さ」だけでは選べない、ある重大な問題があることを知ってしまったのです。

タンクへの攻撃性をどう回避するか

その重大な問題とは、「タンクへの傷」です。バイクの鍵穴は、多くの場合ガソリンタンクのすぐ近くに位置しています。走行中は風や振動でキーホルダーがパタパタと暴れ回り、大切なタンクの塗装面にペチペチと当たり続けてしまうのです。もし、私が最初にいいなと思っていた重厚な金属製のキーホルダーを選んでいたとしたら、ツーリングから帰ってくる頃には、ピカピカのタンクが傷だらけになっていたかもしれません。想像しただけで背筋が凍る思いでした。エストレヤの美しい曲線のタンクに、自分の選んだ小物のせいで無数の細かい傷がついてしまうなんて、絶対に許されないことです。

そこで私のキーホルダー探しの旅は、一気に難易度が上がりました。「可愛くて、私のテンションが上がるもの」という条件に、「柔らかくて、タンクを傷つけない素材」という厳しい制約が加わったのです。候補に挙がるのは、革(レザー)、ラバー(ゴム)、布、フェルトといった素材たちです。革製品はバイクの雰囲気にも合いますし、使えば使うほど味が出てくるので魅力的ですが、金具の部分が露出しているデザインだと結局そこがタンクに当たってしまいます。金具が革で覆われているタイプや、そもそも金属部品を極力使っていないデザインを探さなければなりません。

ラバー製のキャラクターものも考えましたが、エストレヤのクラシカルな雰囲気と合うかどうかが悩みどころです。あまりにポップすぎるとバイクの世界観から浮いてしまう気がしますし、かといって地味な黒いゴムのタグでは面白みがありません。ネットで「バイク キーホルダー 傷つかない」と検索しては、何時間も画面をスクロールする日々が続きました。バイク用品店に行ってみても、機能性を重視した男性向けのデザインが多く、私が求めている「ときめき」とは少し違うような気がして、なかなかこれだという運命の出会いがありませんでした。

最終的に選んだのは自分だけの小さなお守り

数週間の悩める日々を経て、私はようやく一つの結論にたどり着きました。それは、地元のクラフトマーケットで見つけた、作家さんが手作りしている小さな革のチャームです。厚手のヌメ革で作られたそのキーホルダーは、金具が一切使われておらず、革紐で結んで取り付けるタイプのものでした。これならどんなに風で暴れても、タンクを優しく撫でるだけで傷をつけることはありません。デザインもシンプルながら温かみがあり、エストレヤのレトロな雰囲気にもぴったり寄り添ってくれそうです。

実際に鍵に取り付けてみると、その革のチャームはまるで最初からそこにあったかのように馴染んでくれました。エンジンをかけるたびに、その小さな革の手触りを確認するのが、私の新しいルーティンになりました。風になびいてもパタパタと優しい音がするだけで、不快な金属音もしません。何より、大量生産された既製品ではなく、作り手さんの温もりが感じられる一点物であるということが、私とバイクだけの特別な関係性を象徴しているようで、とても気に入っています。

たかがキーホルダー、されどキーホルダーです。バイクに乗らない人から見れば、どうでもいい小さなこだわりに見えるかもしれません。でも、乗るたびに必ず手に触れ、目に入るものだからこそ、妥協せずに選んで本当によかったと思います。この小さな革のチャームは、これから雨の日も風の日も私と一緒に走り続け、少しずつ色を変え、傷つきながら、私だけの歴史を刻んでいくのでしょう。そう考えると、なんだかこのキーホルダーがお守りのようにも思えてきて、ますます愛着が湧いてくるのです。もし皆さんもキーホルダー選びに迷っているなら、見た目だけでなく、愛車への優しさも考えて選んであげることをおすすめします。きっと、バイクもそれを喜んでくれるはずですから。